効果的な医療管理を通して死亡率は低下しているため、喘息は生命保険会社がアンダーライティングを行う際、一般的に大きな懸念事項ではありません。しかし、より重度なコロナ感染症のリスク因子としての可能性が今また注目されています。本インタビューにおいてDr. Achim Regenauerが現状を説明し、喘息とSARS-CoV-2ウィルスの関係性を含め、最新のトレンドや研究についてお話しいただきました。
これは喘息の定義、地域と年齢層により大きく依存します。欧州、北米やいくつかのアジアの国々では上昇傾向が見られます。例えば、学童を対象とした繰り返し調査に基づく研究1では、多くの西欧諸国において喘息の有病率が1960年以降上昇していることを示しています。
この上昇傾向は病気を引き起こす要因・きっかけや増悪因子の変化が原因です。とりわけ人類が原因の気候変動により、花粉濃度が高くなり、花粉飛散の期間が長くなっています。大気汚染よりも花粉の飛散の方が気管敏感性に負の影響があります。
幸い、ここ数十年において喘息患者の死亡率は低下しています2。一番の理由は主に吸入器を利用してのコルチコステロイド(副腎皮質ホルモン)の早期使用と同時に、より高いコンプライアンスと喫煙者の減少です。しかし、喘息患者の死亡率は非喘息の方よりも依然と高いです。
実は重度喘息発作・増悪以外、喘息と死因の関係について多くのことが未だにわかっていません。ある横断的多施設共同研究において、喘息患者の一番多い死因が心血管疾患であり、続いて癌や感染症でした3。喘息のみの患者と比べ、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を併発している喘息–COPDオーバーラップ症候群(ACOS)の患者は死亡率が高いです4。
多くの患者の場合、喘息はSARS-CoV-2感染症に罹るあるいは重症化へつながる強いリスク因子とは考えられていません。例えば、ある大規模なレビューでは喘息患者と非喘息の方の入院期間と集中治療室(ICU)への移行のリスクを比べた時、特に差は見つかりませんでした5。
逆に、直観に反して、いくつかの調査は喘息がCovid感染による死亡率のリスクを実は低下することとつながっていると示しています6。
今のところ、喘息とコロナの間に「危ない関係」を示すデータはありません。しかし、この驚くべき予備的な結果を確認するためには、さらに多くの臨床試験を行うことが必要です。よって、状況が変わるかもしれないので、状況を注視する必要があります。
はい、関係がありそうです。多くの研究より、一貫して人口統計学的な長期コロナ感染症リスク因子となるものは、既存の喘息の他に、年齢、女性、太りすぎ・肥満と(大流行以前)身体的・精神的不健康な状態です。
はい、喘息患者の死亡率、特により重度な喘息やACOSの場合、依然として非喘息の方と比べた時は高いです。非喘息よりも喘息患者の方がより急速に肺機能が低下すると示されています7。肺機能低下の速度と喘息症状の重度との関連性を示した研究もあります。さらに、縦断的研究から、幼少期における喘息が学童期および思春期、さらに成人しても検出できる程度の肺機能低下を引き続きもたらしていることが示されています。喘息は長期コロナ感染症のリスク因子でもあります。軽度の喘息以外の生命保険申請者には、肺機能検査結果の提出がアンダーライティング業務において役立ちそうです。
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1 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC557212/; https://academic.oup.com/jpubhealth/article/38/3/e263/2239842?login=false
2 https://www.resmedjournal.com/article/S0954-6111(18)30242-7/fulltext
3 https://bmcpulmmed.biomedcentral.com/articles/10.1186/1471-2466-13-73
5 https://www.karger.com/Article/FullText/510953
6 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8401144/pdf/main.pdf