これまで3回にわたりがん保険に焦点をあてた記事を紹介してきましたが、その最終回として今回はがんのゲノム配列解析が、がんの検出・特定・細分化・モニタリングにおいて強力な手段を提供することで、どのように早期診断と個別化医療の改善の道を切り開いているのか、またこの驚くべき発展が生命保険会社や医療保険会社にどのような影響を与えるかについて、チーフメディカルオフィサーのアヒム・レーゲナウアー博士の解説をを紹介します。
本コンテンツは簡潔なフォーマットで解説されていますので、複雑な医学的説明を読み解いたり、センセーショナルな見出しを解釈する必要はありません。
また、アジア太平洋・ライフ&ヘルス・クライアントソリューション開発責任者のブライス・シェパードが、生命保険および医療保険業界がこれらの変化にどのように対応していけばよいかについて、市場に関する貴重な洞察とソリューションを解説しています。
ゲノム解析が可能になったことで、社会に貢献する大きな可能性を秘めていると言われてきました。
生命保険・医療保険業界では、ゲノム解析による進歩を商品やサービス、プライシング、アンダーライティングにどのように利用するか、あるいは利用する予定なのかについて、いまだに激しい議論が続いています。一方、パーソナライズされたヘルスプランやウェルネスソリューションなど、実用的なソリューションが登場し始めています。
特にがんの検診・診断・治療の分野では、ゲノム解析がこの業界の道を大きく開いてきました。例えば、患者の予後を改善するための個別化された治療法や医薬品などの分野で、より利用しやすく手頃な価格を実現しています。
ゲノム解析へのアクセスが増え、コストが下がることで、先進的な医療技術が飛躍的に進歩しました。これは、現在の新型コロナウィルス感染症のパンデミック下で、ゲノム解析とm-RNA技術により記録的な速さでワクチンが開発・製造されたことにも象徴されます。
保険の観点から見るとこの影響は、がんの標的治療とそれに関連する個別化医療プランの普及にも見られます。安価なゲノム解析によってこれらの治療法がより容易に利用できるようになると、我々が設計する商品はこれらの最先端の個別化された治療法に関する内容を反映し続ける必要があります。
最初に起こるであろう変化は、商品の定義や言葉の変更です。これは保険金の支払いを特定のがんや個人に合わせた治療に沿って行うことを目的としています。一方、これは、顧客により受け入れやすい商品を目指して説明を簡素化するという今日のトレンドに反することになります。
この分野の研究が進むにつれ生命保険および医療保険商品は、がんの結果と顧客の期待という観点から、新たな状況に対するアクセシビリティと整合性を確保できるよう対応していく必要があります。すなわち、検診・予防・診断・動的な治療・各個人に合わせた回復サービスを提供するための包括的ながん商品とエコシステムの一環として、保険業界が遺伝学およびゲノム解析と背中合わせに位置するという未来です。
そのためには、給付の定義(トリガー)、構造、それに付帯するサービスの内容(提供されるサービスの内容)の観点から、保険商品の設計方法を大幅に変更する必要があります。それに伴い、アンダーライティングも変化し、現在のコホート(集団)ベースの遡及的なアプローチから、よりパーソナライズされたダイナミックなデータ駆動型のアプローチへと根本的に進化するでしょう。
例えば、PartnerReでは現在、革新的で柔軟な複数回支払いの給付ソリューションを開発中です。
しかし、遺伝子的に定義された新たながんのサブクラスに対応するために保険商品の文言を変更したり、上述のようなインパクトと治療法に沿ったソリューションを導入したりすることは、保険金の支払いを簡素化し、顧客満足度を向上させるという点では、どちらも逆行する可能性があります。このようなダイナミックでパーソナライズされた保険をどのように顧客に提示し、顧客がどのように反応するかが鍵となります。また、このような進化を遂げていく中で、「未知のもの」から可能な限り保護するために、どのように商品を再設計するのか、つまり、柔軟性と将来性を考慮して構築することが最も重要であると考えます。
この分野は、社会の健康を促進するために多くの期待と可能性を秘めており、将来どのような保険商品を提案できるのかについて大きな期待を寄せずにはいられません。
この業界にいる我々は、その期待を満たす保険商品の作成に焦点を当て、ベストを尽くす必要があります。すなわち、リスクについての明確な見解を持ち、インテリジェントな製品イノベーションを通じてそのリスクを低減または分散させること、そして何より大事なのは、顧客に高い価値を提供することです。
PartnerReは専門知識を有しており、革新的ながんの提案に強い関心を持っています。貴社のプロテクション商品群について、また、がんのベネフィットがどのように進化するかについて、意見交換できることを心待ちにしております。
本記事は、がんの進歩に関する記事をご紹介する4回にわたるシリーズの最終回です。がんのグローバルトレンド、がんの診断、がんの標的治療をテーマにした過去の記事は、PartnerReのウェブサイトでご覧いただけます。
私どものアプローチは、専門知識の共有ならびにクライアントの成功を創造するというパートナーシップをベースとしています。今後、具体的なソリューションへと繋いでいけるよう、ご意見を頂戴できますと幸いです。
Sohila Kwan, Head of Business Development, Life & Health, APAC
Achim Regenauer, Chief Medical Officer, Life & Health
Bryce Shepherd, Head of Capabilities Development, Life & Health, APAC
3 https://ascopubs.org/doi/full/10.1200/po.18.00169
4 https://sequencing.com/education-center/whole-genome-sequencing/whole-genome-sequencing-cost
5 E.g. https://www.england.nhs.uk/genomics/nhs-genomic-med-service/
6 https://www.ncc.go.jp/en/information/press_release/20190717/20190717152024.html
7 https://www.cancer.gov/news-events/cancer-currents-blog/2017/mutations-metastatic-cancer
8 https://www.foundationmedicine.com/test/foundationone-cdx
9 E.g. https://www.pharmexec.com/view/rising-tide-next-generation-cancer-treatments & https://www.nature.com/articles/nrclinonc.2017.31